WPIプロジェクト ─ ”記録に残らない労働の問題”
住友生命の「働き方改革」は、対外的には業務効率化や生産性向上を目的とした取り組みとして説明されてきました。
しかし、制度設計として
「部下の残業時間の削減が管理職の評価に反映される」
仕組みが導入され、しかも、業務量が減らず、現場では自己申告を強制され、
「残業申請」を抑制してしまう構図の事態をより深刻にしてしまい、
記録されない隠れ残業、すなわち“サービス残業”が奨励される構造が生まれていました。
(参考)信金中央金庫資料(住友生命保険相互会社の「生産性評価制度」)
労働時間の実態把握は、労働基準法とガイドラインにより企業の義務であるにもかかわらず、
“申告されていないから労働ではない”という立場が事実上容認されていたのです。
労働時間把握の基本原則
労働時間の適正な把握は、労働基準法および厚生労働省ガイドラインにおいて、使用者の責務とされています。
特に、自己申告制を採用する場合でも、実態との乖離を防ぐこと
客観的記録との照合 上司による確認などの措置が求められています。
では、大阪人事室長名で発信(2022年4月15日付)された回答文書を深堀りしてみましょう。
K業務部長が貴殿に対して、時間外労働の抑制という観点から意図的にPC遮断後にPCを用いない業務を指示したという事実はなく、
仮にPC遮断後にPCを用いない業務に従事したのであれば、その時間についても労働時間として自己申告することが可能であったと考えております。
✅ この回答から読み取れる運用上の特徴
この回答では、
・PCを使用しない業務については客観的記録が残らない可能性があること
・その時間の把握を自己申告に委ねていること
が示されています。
会社側は、PCを使わない業務(=記録が残らない業務)についても労働者の自己申告任せにする立場を明言しており、使用者側が労働時間の実態把握責任(労基法第108条、安衛法・ガイドライン等)を放棄していることも明文化していると捉えられる内容です。
これは、実質的に「記録のない残業=知らぬ存ぜぬで済ませる制度」を企業として受容していたと捉えられることを意味します。
✅ 補足:労働時間管理に関する行政指導と法的義務
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では 「自己申告制を採用する場合でも、実態と乖離しないように客観的記録や上司の確認などを併用すべき」とされている。
にもかかわらず、住友生命の回答は「申告していれば労働時間だった」という責任放棄型運用を正当化している。
もうちょっと掘り進めます
仮にPC遮断後にPCを用いない業務に従事したのであれば、
その時間についても労働時間として自己申告することが可能であったと考えております。
✅ ここに仕込まれた制度的欺瞞:
| 表現 | 問題点 | 批判ポイント |
|---|---|---|
| 「仮に」 | 事実を不問にする仮定話にすり替え | 真実の立証を避け、自己責任論へ誘導 |
| 「PC遮断後にPCを用いない業務」 | 客観的証拠が残らない領域の業務を意図的に含ませる | 「記録がない=存在しない」と処理する温床 |
| 「自己申告することが可能であった」 | 使用者が負うべき労働時間把握責任を労働者に転嫁 | 明確に労基法108条違反+ガイドライン逸脱 |
✅ まとめ:
本件の回答からは、
・記録に残らない業務が発生し得る運用であったこと
・その把握が自己申告に依存していたこと
が確認できます。
このような運用が、結果として労働時間の実態と記録との間に差異を生じさせる要因となり得る点は、重要な検討課題といえるでしょう。

