―― 基地局の「正論」と、現場の「真空」
労働法や助成金制度について、弁護士や社会保険労務士の皆様が語る「正論」は、条文や制度の理念に基づいた、きわめて正しいものです。
しかし、一人の障害者雇用労働者として、実際に大企業と対峙し、労働行政の窓口に立ち続けた経験から言えるのは、その「正論」が、現場では必ずしもそのまま作動しないということです。
例えるなら、専門家の皆様は、地球の安全な基地局から宇宙船へ通信を送るサポートチームです。
一方、被災した労働者は、実際に無重力と真空の宇宙空間へ放り出された飛行士です。
基地局からは、こう聞こえてきます。
「法律上は、こうなるはずです」
「制度上は、行政が動くはずです」
「証拠があるなら、当然確認されるはずです」
しかし、実際の現場では、大企業が客観記録と整合しない説明を重ね、行政が「当事者間で争いがある」「必要な対応は完了した」として、独自の違法性判断を示さないまま幕を引くことがあります。
そこは、法律の大気が十分に届かない場所です。
条文上は存在するはずの保護が、実務上は作動しない。
行政が判断しないことで、司法の入口にも立てない。
企業が認めず、行政が判断せず、労働者だけが立証責任と費用を背負わされる。
その空間に実際に放り出された者にしか、分からない現実があります。
本アーカイブは、専門家が制度を解説するために書いた理論書ではありません。
実際に、企業の説明、行政の対応、公文書、メール記録、死傷病報告、離職票記録、供託手続などに直面し、その過程を記録し続けた当事者側が持ち帰った、いわば「フライトデータ」です。
どうか、地球上の建前だけで、この記録を測らないでください。
専門家の皆様が前提としている労働保護のルールが、現場でどのように骨抜きにされ、どのように無力化され得るのか。
この記録は、その一点を確認するための資料です。


